俺のメインPC(自作)はASUSのマザーボードを搭載している。
そろそろ3年になるが、さすがのASUS、安定して稼働を続けていた。
そしてファンとかメモリとか、光るパーツをいくつも取り付けて眺めたりしてたんだけど、最近になって大きな問題が発生してしまった。
……ファン、光ってなくね?
これは俺のPCの光物パーツが無事に光を取り戻すまでの、2日間に及ぶ闘いの記録。
※記事中のAmazon商品ページへのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用していますが、メーカーからの提供は一切受けていません。
問題発生
最近、PCゲームのデータが増えてきて、SSDの容量を圧迫してきた。
メイン機のストレージはCドライブ(システムドライブ)のM.2 NVMe SSD 1TBと、Eドライブ(ゲーム置き場)のM.2 NVMe SSD 1TB、あとはSATAのHDDとSSDだ。
容量確保のため、かねてより2TBくらいのSSDに換装しようと思っていたところ、Amazonで「ORICO IG740-PRO」という中華SSD(いわゆる“蝉族”)が特価になっていたのでつい購入してしまった。
HIKSEMIというメーカーがブームの火付け役だったことから蝉族と呼ばれている。
従来のM.2 SSDはキオクシアのDRAM付きモデルと、CFDのDRAM付きモデルで、どちらもかなり高級品だったが、蝉族SSDは初めてだ。
蝉族SSDといえば中華製品であることにさえ目をつぶれば、十二分の高性能と圧倒的安さを両立するコスパお化けであることが数年前に話題となった。
アメリカによる対中国の経済制裁によって生まれたとも言われている……
最近ではかつて安かった製品が軒並み値上げしてたり、性能に直結するNANDフラッシュが製造ロットによって異なるガチャ状態となるなど、色々あって話題もひと段落していたが……
ORICO IG740-PROでは搭載NANDがTLCであることが保証され、ガチャの心配がないうえにやたら安いという、最近では珍しい状態に。
注文した品が土曜日に届き、PCケースを開けてゆっくり換装作業。
その後フルフォーマット(おまじない)やSSDのクローンなどを行い、問題なくデータの引っ越しが完了。
しかしベンチマークテストをしてみると、やけにアクセススピードが遅い……

まさか、SSDに貼ってあったグラフェンシートを剥がす時に基板をやっちゃったか?
中華SSDにはおなじみのグラフェンシートだが、ちゃんとしたヒートシンクに比べれば放熱性能に雲泥の差があるので、やはりヒートシンクは付けたい。
しかし自前のヒートシンク「CFD HSN-TITAN」は、グラフェンシートを貼った状態の本製品だと分厚すぎて装着できない。
だから剥がす!
SSDのグラフェンシートは粘着力がやたら強く、熱を加えながらゆっくり慎重に剥がす必要がある――と聞いていたが、IG740-PROの場合はシート自体も粘着力もかなり柔らかく、簡単に剥がすことができた。
しかしグラフェンシートを剥がすと製品保証が切れてしまう場合がある、自己責任の行為だ。
いやー、それが原因じゃないと信じたい……買ったばかりのSSDがお釈迦になるなんて(お釈迦ではない)。
ほとんど偶然だが、原因がわかった。
ASUSのマザーボードを搭載しているPC向けの、ファンコントロールやARGB LEDなど様々な制御を行なうツール「Armoury Crate」。
そのARGB制御機能である「Aura Sync」のタブからARGBデバイスを見ると、なぜかIG740-PROが制御対象となっている。
LEDなんて付いてないのに!
つーか蝉族にLEDなんか付いてるわけねーだろ!(偏見)
そこに注意書きがあり、「このデバイスのライティング効果をAura Syncで同期すると、読み書きのパフォーマンスに影響が出る場合がある」みたいなことが書いてある。
おい、これだろ。
制御する対象のデバイスから「SSD」のチェックを外すと……

はい、解決!
チップセット側のM.2スロットへの接続だから公称値にはいくらか及ばないが、これが本来の性能で間違いない。
AMD環境だともっと速くなるらしいが、Intel環境なので……
ついでにArmoury Crateのアップデートもしとこう。
よし、一件落着! めでたしめでたし。
そういえば、さっきからARGBファンが光ってないなー、なんでだろなー。
……えっ、なんで?
なんで???
――そう。
本当の戦いは、これからだったのである――。
ケースを開けて
俺のPCではCPUファン、ケースのフロントファン、そして電源ファンがマザーボードのARGBヘッダーに接続され、ASUSのソフトによってLEDの発光パターンが制御されている。
マザーボードは「ASUS TUF GAMING B660M-PLUS D4」で、このマザーボード自体にも隅っこにさりげなくARGB LEDが搭載され、光るようになっている。
以前はヒートシンクのないメモリーを使っていて、それにARGB LED付きのヒートシンクをわざわざ付けて光らせていたのだが、これが時々光らなくなることがあった。
そういう時は大抵、ARGBケーブルを差し直すか、Armoury Crateで設定をし直せば治った。
というわけで過去の事例に倣い、ケースを開けて接続チェック。
ARGBのヘッダーとプラグの接続って、なんであんなにしっくりこないんかね?
差しにくく抜けやすい、クソみたいなコネクターだってずっと言われてるよね。
いや、差しにくいのは俺のケースの中にいろいろ詰まってて、ヘッダーが奥まってるからというのもある。
さて、接続に問題がないことを確認したが、やはり光らない。
じゃあ次はソフト側だな。
Armoury Crateの「デバイス」タブをチェック。
You must first update your device to continue.
エラー出てくるんですが。
デバイス欄には何も出てこないし。
そういえば今年に入ってから、Armoury Crateのコンポーネントの更新がうまくいかないことがあったな。
でも、さっき本体は更新できたし。
……何が起こってるんだ?
Armoury Crateのアンインストール
Google先生に問い合わせる。
調べてると、そもそもArmoury Crateはいろいろ不具合があるって散々な評判らしい。
最高のマザーボードと最低のソフトで知られる最大手メーカー、ASUS。
そして、どこにもたいてい書いてあるのが、Armoury Crateのアンインストール&再インストールを試せってこと。
これをやっていこう。
Armoury Crateをアンインストールするには、コントロールパネルから普通に……ではなく、「Armoury Crate Uninstall Tool」という専用のプログラムを使う。
これで関連コンポーネントも含め、きれいに消してくれるのだ。たぶん。
アンインストールできたら、いったんPCを再起動して、Armoury Crateをインストールし直して、また再起動。
Armoury Crateを起動し、デバイスを……の前に、コンポーネントを更新しろってまた言われるから、更新……
やっぱりうまくできないし。
どこかでミスったか?
Armoury Crateをツールでもう一度アンインストール、今度はちょっと古いバージョンを仕入れてきて、再インストール。
Armoury Crateがメジャーバージョンアップしたのは最近だから、ちゃんと動いてた頃のバージョンを試すのは定石。
しかしうまくいかない。
バージョンの違いとか、コンポーネント更新のタイミングとか、いろいろ試してみたけど、そもそもARGBデバイスが認識すらされないのだ。
Armoury Crateが認識してくれないものを、俺にどうしろっていう……
ちなみに、俺が調べて得た情報は何年も前の古いものが多かったのだが、一つだけ今年の、それも俺と全く同じマザーボードでの情報があった。
「マザーボードが検知されなくなり何もできなくなります」という報告は、俺の状況と一致。
ただ、そこでもArmoury Crateの再インストールで解決って書いてあるけど、俺の場合は無理だったんだよなぁ。
お手上げ?
その後、「システムの復元」を用いて、色々正常だった頃のシステムイメージにロールバックしてみたり、さらに以前のシステムイメージに……
ここまでくれば、もはやソフト側の問題じゃないって薄々わかってくる。
ポイントとなるのは、OSが起動していない時にも勝手に(同期せずに)光るはずのファン等が光らないという点。
つまりArmoury Crateは関係ない?
そしてもう一つ、ARGBヘッダーに接続したデバイスだけでなく、マザーボードに搭載されたARGB LEDも光らないという点だ。
マザーボード上のLEDはPCがシャットダウン状態でも光る設定にしていたが、それも光ってない。
もはやOSもBIOSも関係ないのでは?
そもそもBIOSにARGB関連の項目はない(と思う)けど。
これらは問題がマザーボードのハードウェア側にあることを示唆するが、物理故障だなんて勘弁してほしい。
そもそも大して弄ってもないのに。
結論を言うと、今回の問題はマザーボードのファームウェア、あるいはそれに近いレベルにおいて、ARGBを制御するためのデータに異常が起こったのが原因だろう。
おそらくArmoury Crateのアップデートの不具合に起因して、変なデータがマザーボードに上書きされ、光らない&認識もされない状況に陥ったのだ、たぶん。
で、データを修復しようにも、そもそもArmoury Crateから認識すらされてないからどうしようもないと。
わざわざ買った俺の光物パーツはもう、ずっとこのままなのか……
マザーボードのせいで、高かったファンとかが無意味になるのは痛すぎる。
かといって、他は普通に動いてるマザーボードを買い替えるのも馬鹿らしい、ファンより高いし。
そもそも光物になんか手を出さなければ、すべての余計な出費はなかったわけで、今さらながらちょっと反省。
貧乏人らしく、ね。
CMOSクリア!
翌日、相変わらず光らないPCに意気消沈しつつ、今度は何を試してみるかと絶望的な試行錯誤を続けていたが……
薄々勘付いてはいたけど、マザーボードが(物理的にではなく)おかしい時は、いわゆる「CMOSクリア」で解決するのでは?
「RTC(リアルタイムクロック)のリセット」ともいう。
マザーボード上にあるボタン電池のアレ。
BIOSレベルの問題を解決するのによく使う。
今回の問題はこれでは解決しないかもしれないけど、試すのは簡単だし、駄目だったらその時考えよう……
俺のマザーボードに「CMOSクリアボタン」みたいな豪華なものはなくて、「CLRTC」と書かれた2本のヘッダー間をショートさせる。
そのためにわざわざジャンパピンを買っていたのだ、20個入りをな!
絶対そんなに使わんわ、てか1個でいいわ。
ジャンパピンなんてなくてもドライバーとかでショートさせればいいんだけど、俺の100均ドライバーではショートしなかったから買った思い出。
というわけで再びケースを開け、ジャンパピンを装着、しばらく待つ。
数分後(そんなに待たなくてもいいかも)、ピンを抜く……手が届かない。
電源とかグラボとか外すの面倒なんだもん……
ピンセットもなかったのでペンチ……隣のコンデンサーにつっかえた!
けどギリギリ抜き取ることができた。
ちなみに、差す時にうっかりピンを落としちゃって、ケース内で行方不明になった。
ちゃんと分解して探せば見つかるはずだけど、面倒n(以下略)
買っててよかった20個入り!
あと18回までなら紛失しても大丈夫だな!
んで、CMOSクリア後のPC初回起動時にはBIOSが立ち上がるから、メモリのXMPとかいろいろ設定し直して、Windowsの起動に進む。
てか、ファン光ってるじゃん!
マザーボードも!
念のため、アンインストールしていたArmoury Crateをインストールし直して確認。
デバイスの認識もされてるし、制御もうまくできてる。
ORICOのSSDをARGBの制御対象から外すのも忘れずに……
なるほど、マザーボードのハード側の問題が疑われる場合には、CMOSクリアも試してみるべきだな。
解決!
まとめ
ASUSマザーボードの環境において、「Armoury Crate」の不具合のせいでARGBデバイスの認識がされなくなり、Armoury Crateの再インストールで解消されない場合、マザーボードのCMOSクリアを試そう。
俺が2日間ネットと再インストールの迷宮をさまよって得た教訓である。
後の人が苦労しなくていいよう、ここに記す。
あとASUSさん、Armoury Crateの不具合を何とかしてね(ハート)
こめんと