みなさんは「海の京都」なるものをご存じだろうか。
京都市は盆地にあり、海のイメージとは無縁の場所に思える。
しかし、京都“府”は南北に長く、北部は日本海に面しているという事実を知る人は少ない。
近年では外国人を含む観光客が急増している京都であるが、その流れから取り残されまいとあの手この手で観光誘客を試みる、京都府北部の苦しい戦いがそこにはあった。
今回はそんな、俺の故郷(かつ現住所)でもある京都府北部、「海の京都」について思っていることを語りたい。
京都の海?
地図を見てもらえれば一目瞭然なのだが、京都府にも海があるという事実は、京都市民にさえもあまり知られていないという。
というのも、京都市民は海より琵琶湖に行き、海に行くとしても大阪か白浜(和歌山県)、ということらしい。
京都府北部には海軍ゆかりの街として知られる舞鶴(今も海上自衛隊の一大拠点)があるにもかかわらず、だ。
舞鶴? 福井県だろ? とか思われているらしい。
また「日本三景」の一つに数えられる海の景勝地「天橋立あまのはしだて」もあるのだが。
天橋立? 福井県だろ? とか(以下略)
伊根のブリとか、間人のカニとか、名高い海産物もある。
しかし如何せん、海云々以前に、京都府北部の知名度がなさすぎる。
南部の人すら北部のことを知らないとか、さすがに異常じゃないか?
と思ったが、京都人って自分たちが日本の中心だと思ってるから、余所のことなんて興味ないんだろうな。
まあ、京都市が“京都”のほとんどすべて、と思われるのは無理もない。
京都市があまりにも有名な観光地すぎてその陰に隠れる、というのもそうだが、京都観光のついでに来てもらおうにも、京都市から車でも電車でも2時間以上もかかるんじゃ、交通の便が悪すぎる……
日本海側で高速道路が全通するのが最後になりそうだとか、いろいろ不遇な京都府北部。
このままでは北部の全自治体が自然消滅だぁ!
そこで、北部の5市2町(福知山市、舞鶴市、綾部市、宮津市、京丹後市、伊根町、与謝野町)が団結して観光PRをしよう、と結成されたのが「海の京都」だ。
「海の京都」の取り組み
オフィシャルサイトで、いろいろやっている……ような、いないような……
ぶっちゃけ、「海の京都」在住の俺自身も、よくわからん。
イベントはちょくちょくやっているようだけど。
先日の台風でひとつがお流れになってしまったけど。
トップページを見るだけではいまいち訴求されないような気がするんだけど、俺が地元民だからか?
あとスライドショーのUIが悪い。右ボタンを押すと右にスライドして左の画面が表示されるけど、普通逆じゃね? まあいいや。
「海の京都」が微妙なわけ
住んでても思うもん。北部なんて何にもない。
それでも、少し足を伸ばせば来られるなら、来る人もいるだろうが、(京都市からの)行きと帰りだけで4時間、観光すれば間違いなく1日かかる。
道中は山ばっかで、それこそ何もない秘境「京都府中部」だから寝るしかないし、電車は便数が少なく、高速道路は途中から片側1車線(追い越しできない)。
比較的交通の便がよく、観光資源に恵まれている福知山や舞鶴、せいぜい宮津はまだいいが、「持たざる者」のアピールポイントがさすがに弱すぎてどうにもならない。
与謝野町、とくにお前だよ。
あと、隣に強力なライバルがいることも大きい。
兵庫県北部には、文豪と号泣県議・野々村竜太郎が愛した「城崎温泉」という、交通の便がよく、冬にはカニも食べられる、京都府北部の上位互換のような観光地があるのだ。
(ノノムラは実際には来てないから愛してない)
城崎温泉は大火事が起こっても外国人を含め、京都観光のついでなんかでわざわざ来てくれる観光客が急増しているというのに……
京都・大阪から電車1本でカニと温泉、それも日帰りだぜ?
水族館もある。
そんな城崎を蹴って、選んでもらえなきゃ来てもらえないなんて、ハードモードっすな。
「もうひとつの京都」
だから徒党を組んで「海の京都」というわけだが、おい、福知山と綾部。
お前ら海に面してないだろ!
つーかお前ら、ちゃっかり「森の京都」にも入ってるじゃねぇか!
※森の京都:「海の京都」と同じく、京都府中部の自治体が徒党を組んだもの。
いや、あっちはあっちで切実なのはわかるけど、お前らどっちかにしろよ!
……え、それを言ったら与謝野町だって「阿蘇海」という汽水湖に面してるけど、海にはギリギリ面してないだろって?
与謝野町は勘弁してやれよ、まじで何にもないんだから……
ちなみに阿蘇海は宮津湾の奥が砂州である天橋立によって海と隔てられた汽水湖だから、阿蘇海あっての天橋立だよ。
そしてその砂州は与謝野町を流域とする「野田川」によって形成されたから、与謝野町マジ重要。
「海の京都」と「森の京都」、さらに「お茶の京都」(京都市よりさらに南の自治体が徒党を組んだもの)、三つ合わせて「もうひとつの京都」というそうだが、そもそも三つもあるじゃねぇか!
まあ、恵まれない同士、仲良くやっていかなきゃだけど、さすがにこのあたりはどうしても言っておきたかった。
というか、実は今回はこれが言いたくて記事を書いた。
べつに観光PRをしたかったわけじゃなくて……地元のブロガーとしてはそうすべきかもだけど……
にしても、「海の京都」って何なんだ……
「海の京都」のメンバー紹介
最後に、「海の京都」の魅力ある自治体を紹介しよう。
福知山市
京都府北部の交通の要衝で、京都市からも大阪からも来やすい。
明智光秀ゆかりの「福知山城」がシンボル。
いろんな企業が出店する、京都府北部民の期待の星。
海はないが、「由良川」という暴れ川(厳密には支流)の氾濫でよく水浸しになる。
舞鶴市
日本海側で最大の軍港をルーツとする港湾都市。
赤レンガの倉庫など、ノスタルジックな風景が広がる。
『艦これ』の影響で最近では若者の間での知名度も急上昇?
言っておくが、「肉じゃが」は呉でも横須賀でもなく舞鶴が発祥だからな?
とか言ってたら、最近は3市で仲良くPRしてるんだとか。
綾部市
福知山市よりもさらに由良川の上流にある、田園と森の街。
繊維メーカー「グンゼ」の創業の地で、(登記上の)本社の向かいにバラ園を運営している。
あとは和紙を作ってるとか。
海はないどころの話ではない、バリバリの山の中。
宮津市
「天橋立」は“日本三景”と言われるが、他の「宮島」や「松島」なんかと比べて知名度がなさすぎるのが悩み。
最近「イグ・ノーベル賞」の研究対象となった「股覗き」で逆さまになって見てみると、また違った見え方を楽しめるとか、しかし女性にはハードルが高い。
京丹後市
日本海の荒波に削られた断崖絶壁や奇岩巨岩のダイナミックな景観が広がる「山陰海岸ジオパーク」が見どころ。
あとは冬のカニをはじめとした魚介類。
海岸以外では……なんだろ。
本能寺の変の後、細川ガラシャが3年間隠れ住んだ場所が山奥に……
伊根町
「舟屋」が有名。
そう、『鉄腕DASH』にも出てくる、下が倉庫 兼 船着き場になっている家々が、波打ち際に並んでいる素朴な風景がどこか懐かしい。
全国にいくつかある「浦島太郎」の伝説が残る場所の一つ。
交通の便は絶望的に悪いが、最近は観光客が増えているとかで、観光バスも出ている。
与謝野町
かつては「ガチャ万」ともいわれ、全国一の生産量を誇った「丹後ちりめん」の発祥の地。
織機を1回「ガチャ」とすれば1万円、と言われるほど、バブル期にはよく売れたんだとか。
それに由来する歴史ある街並みが……と言うには規模がしょぼすぎて、おまけに何もなくて、観光客が全くと言っていいほど来てくれない。
がっかりスポットすぎてさすがにお勧めできないが、(たぶん)誰も来たことがないという点を自慢したい人はぜひ。
海はないが、塩分濃度が海の半分程度とされ、かろうじて海と繋がっている汽水湖である阿蘇海に面している。
まとめ
そうだ、「もうひとつの京都」行こう。
ほんと来て、それなりにいいところだよ!
あと関係者の皆さん、俺でよければPR記事も書きますので、ぜひ御用命を(よくない)。
こめんと