海外製の美少女恋愛アドベンチャーゲーム『Doki Doki Literature Club!』(DDLC)の1周目をクリアしてから、早5ヶ月……
遅ればせながら、やっと時間を取れて、本作の全クリ(エンディングのスタッフロール)までたどり着いた。
そうこうしている間に、非公式ながら日本語化modが公開され、日本でも徐々に多くの人がプレイするようになった。
しかし俺は、まだ日本語化modが影も形もない頃に始めた、日本においては言わば先駆者だ。
海外の作品にもかかわらず、日本でもここまで広まったのは嬉しいし、これからもっと広まってほしいし、そのために俺はこれからも活動していくつもりだけど。
先駆者と言いながら、すでにmodでプレイした人にすら追い抜かれてる!
それはさておき……
1周目を泣きながらプレイした俺に、はたして救いは訪れたのか。
今回はまず、2周目の感想と考察を、あらすじとともに振り返る。
はじめに
この記事は当然ながらネタバレを含む。
また、「お子様または心を乱されやすい人」には向いていない衝撃的な内容を含む。
そういうのなしでこのゲームの紹介を読みたい人には、この過去記事をオススメする。
残念ながら本作は「そういうゲーム」なので、ネタバレなしではその実態をほとんど紹介することができないが……
また、俺は日本語化modなどを使わずに英語でプレイしたため、この記事には俺の解釈の誤りや日本語版との差異に起因する錯誤があるかもしれない。
翻訳って難しいし、俺はそれほど英語が得意じゃないし……
あらすじ
※あくまで俺が通ったルートのあらすじ。とはいえ、2周目以降はあまり大きな差は出ないと思う。
1周目のおさらい
ナツキに一目惚れし、最初から一貫してナツキを攻略しようとした俺だったが、日を重ねるごとにおかしな様子を見せ始めるサヨリに対する同情心が芽生え、俺は悩み始める。
それでも初志貫徹を誓い、ナツキと週末を過ごすことにするが、日曜にサヨリと話し、俺はついに心が折れた。
俺はサヨリにその場しのぎの告白をすることにしたが、サヨリは翌日に病的な詩を残して自殺してしまった。
俺はただひたすら後悔した。
そして「ゲーム」は壊れ始めた。
END
2周目
メインメニューからサヨリが抹消され、「New Game」だったボタンが文字化けしている。
新しいゲームを開始すると早速、サヨリのセリフだった部分が文字化けしていて、サヨリの立ち絵が表示されるべき地点に差し掛かると、ゲームが急にバグりだす。
そして世界は、サヨリのいない学校生活に置き換えられた。
サヨリではなくモニカに誘われて文芸部に入部し、「一部が同じで一部が違う」生活が始まる。
それでも懲りずにナツキを攻略しようとする俺だったが、ナツキの様子が少しおかしい。
その後、ナツキの攻略を継続しようとするも、ユリにイベントを強制的に奪われ、どんな詩を書いてもユリに気に入られ、図らずもナツキに寂しい思いをさせてしまう。
そうしてユリと時間を過ごすうちに、ユリが徐々にヤンデレへと変貌していく。
モニカはそれを阻止して主人公と一緒に過ごそうとするが、ムードメーカーだったサヨリのいない文芸部は雰囲気がぎくしゃくし、収拾がつかなくなっていく。
そして主人公は、ユリが廊下の片隅で自傷行為をしているのを目撃する。
その日のユリの詩には……わけの分からない文字の羅列が、血やその他の染みが一面に付着した紙に書かれていた。
ナツキは、様子がおかしいユリを何とかしてほしいことと、モニカが怪しいことを主人公に伝えるが、何者かの「不自然な干渉」によって気が変わってしまい、かわりに「モニカだけ」を選ぶよう、主人公を強く説得する。
間近に迫った文化祭の準備のため、週末を一緒に過ごす女の子を選ぶが、もはや選択肢は「モニカだけ」しか用意されていない。
しかしついに感情を隠さなくなったユリが他の女の子を追い出し、部室に主人公と二人きりになったところで、ユリは主人公に愛を告白する。
主人公がその告白を断ると……ユリは隠し持っていた包丁で自分の腹と胸を刺し、自殺してしまった。
ユリの亡骸を前に、主人公は一歩も動かず、長い週末を過ごした。
迎えた月曜、文化祭の日、モニカが登校してきて顛末を知ると、さして驚いた様子も見せず、「コマンド」を呼び出してユリとナツキの「データ」を「削除」してしまった。
感想と考察
ここからは、2周目のストーリーをなぞりながら、俺の感想と考察を綴っていく。
今回も長いよ。
1日目
「New Game」があった場所には、かわりに文字化けしたボタン。
そんなものにうろたえるものか、俺はサヨリを救い、文化祭を成功させ、そしてナツキと結ばれるんだ!
ということで、そのボタンを押して2周目を開始。
普通に始まる……と思いきや、1周目で「サヨリ」だった箇所や、サヨリのセリフがすべて文字化けしている。
ま、まさか……
しばらく進めると、サヨリの立ち絵が現れるシーンに辿り着くが……
!?
突然、ゲームの画面と音声が激しく乱れる。
しばらくして落ち着いたかと思えば……
主人公は一人で登校しており、今までずっとそうだったと言っている。
そろそろ女の子に出会ったりしないだろうか……
そんなことを考えながら、変わり映えしない一日を終えた放課後、どこかの部活を見学しに行こうと考えているところに、サヨリ……ではなくモニカが現れる。
あぁ……やっぱりもうサヨリは……
モニカに誘われて文芸部へ。
部室にはナツキとユリがいたが、1周目とは多少の違いが。
例えば、たまに立ち絵の表示が一瞬だけバグったり、ノイズ音がしたり。
ナツキに前もって新入部員が来ることを知らせていなかったため、カップケーキが用意されていなかったり。
何より、文芸部にはまだ部員が3人しかおらず、正式な部活として発足させるには人数が足りないとのこと。
そこで主人公はモニカの遠回しな懇願に負けて、文芸部への入部を決意する。
そしてその日の活動が終わり、主人公が帰宅して、さっそく詩を書き始める……と思ったら。
「特別な詩が解禁されました。読んでみませんか?」 「はい」「いいえ」
な……なんだと……
もちろん読むしかないが――
「特別な詩」とは、10種類あるうちの3種類がランダムに選ばれ、2周目の特定のタイミングで表示される、詩のような何かのことだ。
俺が最初に読んだのは、「今日、私は初めて自分の肌を切り開いた。」という一文で始まるものだった。
途中、人名と思われる1語が黒塗りで隠されているが、2周目をプレイすればそれがユリであることは容易にわかる。
この詩(?)は、作者(おそらくモニカ)がその人物の気持ちを知ろうと、自ら肌を切ってみた時のことを綴ったものだ。
それは爽快だったと書かれているが、一方で、自殺でもしようと決心しない限りはもうやらないだろうとも書かれている。
最後の1文には「この出来事の記念を以下に残す。」とあり、その下の余白には、血を擦り付けたような赤い染みが付着していた。
本作はホラーゲームへと変貌を遂げつつあったが、実際にゲーム内で血のような直接的な描写を目にするのはこれが初めてだ。
いや……実は、1周目ラストで見られるサヨリの亡骸は、よく見ると両手が血まみれだったのだが。
この詩を読み終わると、ようやく詩作ミニゲームが始まるが、画面左側の「詩のターゲット」はナツキとユリの二人だけだ。
ついにモニカが出てくると思ったのだが。
サヨリはもういないが、サヨリが気に入るはずだった単語は依然登場し、それらはすべてナツキかユリのポイントに置き換えられる。
というわけで、俺はいとも簡単にナツキ向けの詩を仕上げ、1日目が終わる。
いきなり怪しさ満点な1日目だったが、これから本当にどうなってしまうのか。
俺は今度こそナツキとの愛を深められればそれでいいのだが。
2日目
さて、このタイミングでゲームのインストールディレクトリに「CAN YOU HEAR ME.txt」(聞こえますか)というテキストファイルが生成されている。
俺はまだちゃんと訳していないが、その内容はいたずらに意味深なだけで理解しがたい内容にも見える。
一部、わかりやすい部分もあるが。
で、本編では主人公は早速部室に到着。
俺は翻訳しながらプレイしているので、普通にプレイするよりずっと時間がかかるわけだが、何だか画面とBGMに違和感が……
まず、背景と立ち絵が、非常にゆっくりと右に傾きながら、拡大している。モニカの立ち絵だけは正常だが。
そしてBGMが、ワンコーラスごとにピッチがすこしだけ上がったり(同時にキーも上がる)、元に戻ったりを繰り返している。
話の内容のほうは、サヨリがいないことを除けば、ユリが主人公のために選んでくれた本を借りるという、1周目と同じ展開。
やがて画面とBGMは正常に戻る。
ここで運のいい(?)人は気付くかもしれないが、部室のシーンでは低確率で、背景の掲示物の一つが「サヨリが首を吊っているシーンの画像」に置き換わる。
なんという嫌がらせ……もとい、精神攻撃。
そしてナツキルートとユリルートの分岐だが、俺はもちろんナツキルートへ。
1回目のナツキイベントは、1周目のものと同じ内容だが、数か所のナツキのセリフが……
ものすごい太字? いや、縁取りが太いだけだが、とにかく黒い。黒い。
見た目だけでなく、セリフの内容も黒い。
いや、これはスルーすべき記述じゃないだろ……殴られるって、ナツキの父親はただ厳格なだけじゃなかったのか?
また2周目であるからか、1シーンがバッサリとカットされてたりしたが、その後暗転したかと思えば、初めて見るCGが。
ナツキが眠ってる!!!!! かわいい!!!!!!!!!
呼びかけると、今度は半目を開けてこちらを見つめる。
ぎゃああああぁぁぁあああぁぁぁかわいいいいぃぃぃぃぃいいい!!!!!!!!!
2周目って素晴らしいな!
と思ったのも束の間、ナツキは主人公のほうに倒れ込み……
いやいやいや、おかしい、目が、口が、BGMが!
ナツキの両目と口にモザイクがかかり、さらにセリフが判読できない真っ黒な文字列になっていて、BGMも歪んでいるではないか!
するとモニカが現れ、ナツキのほうに「プロテインバー」を放り投げると、ナツキはすぐさまそれを拾い、封を開けて貪った。
モニカによると、ナツキは時々こうなるため、モニカのカバンにはスナックを常備しているとのこと。
なるほど、餌付けは基本だな。……んなわけねーだろ! 1周目にそんなシーンなかったわ!
何ともいえない雰囲気のまま、ナツキイベントは終わった。とにかくナツキは大丈夫らしい。
そして詩を見せあう時間になり、ナツキ→ユリ→モニカ、の順で詩を見せることにした。
ナツキに詩を見せると、ナツキは1周目と同じく、素直ではないが気に入ってくれた。
ナツキの詩は1周目と同じく、『Eagles Can Fly』(ワシは飛べる)という題名の、いろんな生き物の特技を綴ったものだ。
1周目の時点では恥ずかしながらこの詩の真意を捉えることができなかったのだが、その後の解釈でようやくわかった。
みんなそれぞれがいろんな特技を持っていて、他人を見れば羨ましく思えることもあるが、その他人にとっては、またそれだけのことだったりする、という諦めの気持ちが込められている。
次にユリだが、ここも1周目と全く同じだった。
詩の題名は『Ghost Under the Light』(街灯の下の幽霊)。
そしてモニカだが、ここで俺がナツキに向けた詩を書いていると知ったモニカからアドバイスが。
「ナツキに興味があるのなら、お菓子を常備しておくのよ。そうすれば、あの子ったら子犬のようにあなたにくっついてくるわ」
相わかった!
ところが、ここでナツキに関する衝撃の新事実が。
ナツキの父親はナツキに昼食代を渡さず、なおかつ家に食べ物を残しておかないため、いつも苛立っているらしい。
そして、たまに元気がなくなってしまって動けなくなるのだという。
さらに、彼女の体が小さいのも、成長期の栄養不足によるものらしい。
……それは本当なのか? そんなのまるで……虐待じゃないか。
「でもね、ちっちゃい女の子に夢中になる人もいるんでしょ?」
何言ってるんだよ……
\ わ た し で す / (AA略)
モニカの詩は、1周目の最初の詩と同じ『Hole in Wall』(壁に開いた穴)という題名だったが、内容は全く異なっている。
というより、これは1周目の詩の続き、なのか……?
1周目の詩は、無意味なものを見続けた網膜は焼けてしまって、何も見えなくなってしまったところに「彼」が現れた、みたいな内容だったな。
そして2周目の詩は、しかしその「彼」は私のことを見ておらず、やがて部屋は収縮し始め、呼吸する空気は肺に達する前に霧消し、私は慌てて……ペンを振るう、という、意味深だがよくわからない内容だ。
その詩を書くにあたっては、1周目と同じくある種の「ひらめき」があったようだが、今回もそれが何なのかは教えてくれない。
主人公の詩の見せあいが終わると、ナツキとユリが詩を見せあうのを眺めることになるが、2周目でもやはり二人はウマが合わないようで、口論を始めてしまう。のだが。
モニカが助け舟を出そうとした直後の辺りから、BGMはどんどん加速していき、画面が鼓動するように揺れ始め、画面全体が暗く、砂嵐がかかったような表示になっていく。
BGMは最終的には理解不能なほど高速になり、耳を突き刺すようなキーの高さになる。
そして二人の言い争いも徐々に激しい罵り合いになっていく。
いや……俺は翻訳しながらのプレイだから、普通のプレイなら数分で読み終えられるこのシーンで、俺は約1時間もの間、この気の狂いそうになるBGMを聞き続けなければならなかった。
しかもその翻訳も……
ユ「あなたは本当に、見た目通りに行動も幼稚ですね、ナツキさん」
ナ「私が? こっちのセリフよ、この中二病崩れのクソ女!」
ユ「あなたは服装や行動さえ可愛くすればその毒々しい性格を補えると思っているんでしょう? あなたの可愛いところは、その努力だけです」
ナ「まあまあ、気をつけないと、そのトゲ(※)で自分自身を傷付けちゃうわよ。あらやだ……アンタはもう、そうしてるのよね?」
※トゲ(edge の意訳)は中二病(edgy)とかけているものと思われる。
そして主人公は、二人を仲裁することになり、肩を持つのはもちろん……
「ナツキ」のボタンを押すが……何かに阻まれてクリックが効いていないようだ。
んなわけあるか、バリアとか、アクションゲームやシューティングゲームじゃないんだから……
諦めずに何度も「ナツキ」のボタンを押すが、何かに阻まれる音がして、徐々に画面がこちらに近付いてくる……もとい、拡大されていくばかりで、なかなかナツキを選べない。
そのうち、拡大されすぎて立ち絵はほとんど見えなくなり、選択肢のボタンすら画面からはみ出す。
何度ボタンを押したか……その時、BGMが消えるとともに、モニカが画面表示と俺の間に割り込んでくる。
なんだお前……チートかよ……
それでもしばらく選択肢が表示され続けるが、やがてモニカに廊下に連れ出され、選択肢はなくなる。
二人で少し話していると、ナツキが泣きながら部室から飛び出して走り去っていき、二人のケンカは終わった。
部室に戻ると、ユリは「そんなつもりじゃなかった」と繰り返し呟いていた。
で、お前は俺のナツキに何を言ったのか、言ってみろ。
俺はとにかくナツキが心配だった。無事だといいのだが。
モニカは、明日になればナツキは今日のことなど「完全に」忘れるだろうと言っているし。
今日の部の活動はお開きとなったが、ユリは主人公と本のことを語り合いたいと言うと、画面がバグってシーンが飛び、一気に1日が終わって詩作ミニゲームが始まる。
……おいおいモニカ、いくら自分が気に入らない展開だからって……
とにかくこの日の詩もナツキ向けに作ることにした。
しかし、単語の選択肢の中には「文字化けしたような文字列」が時々混じっている。
それを選択するとどうなるのか、興味はあったが、どう考えてもナツキが喜ばないと思うので、あえて選ばず、20個すべての単語をナツキ向けに仕上げた。
3日目
このタイミングで、ゲームのインストールディレクトリに「iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii.txt」というテキストファイルが生成されている。
このファイルの内容は、「あなたが何度プレイしても何も変わらない」ことに苛立っているというもので、前日のファイルとは異なり直接的な表現となっている。
「私があなたに望むのは、あいつらを嫌いになってくれることだけ」
ゲーム内では、主人公が部室に入ると、そこにいたのはユリだった。
モニカはまだ部室に来ておらず、一方ナツキはマンガを読んでいた。
ナツキ!!!!!! 無事だったんだな!!!!!!!!!
ユリは主人公とナツキに、昨日のケンカのことをひたすら謝ったが、ナツキは本当に昨日のことなど「完全に」忘れているかのように、平然と……
「いったい何の話をしてるの?」
「何も悪いことなんて起こった記憶はないわ」
「それでアンタの気が済むなら、とにかく謝罪を受け入れてあげるわ」
何だろう、この違和感は……この黒いセリフといい、何だか無理やり言わされているみたいな……
ただ、主人公には「アンタはまだお試し期間中よ」と言われてしまう……なっちゃん厳しいっす……
その頃、部室にモニカがやってくる。どうせピアノだろ! ネタバレ乙。
まぁ、ピアノだったわけだが、今回は作曲にも取り組んでいるのだという。
あ? つまり、1周目にはピアノの練習をして、次に作曲をして、じゃあそのうち詩でも付けてエンディングで歌うってか?
あ、これはあくまでこの時点での予想だけどね。当たってたけどね。
そして、待ちに待ったイベントへの分岐。
今日ももちろんナツキとの……
邪 魔 を す る な ユ リ
ナツキのことを気にかける主人公を、ユリは強引に連れ去り、ユリイベント開始。
なん……だと……
ナツキルート終了のお知らせ。合掌。
ユリルート、こんにちは。
ユリが昨日貸してくれた本を一緒に読む。
俺はナツキのイベントを奪われたことを根に持っていたが、ユリのイベント自体は悪くなかった。
もっとも俺は1周目にユリを攻略しなかったし、彼女のイベントやルートが本来どんな話だったのかも詳しくは知らない。
本の題名は『マルコフの肖像』というもので、表紙の不吉な目のシンボルが印象的な、ホラー小説のようだ。
そしてイベントCGが表示され、二人で本の片側ずつを持ち、ページをめくるのはまるで共同作業……
その間、いたって正常に時間が流れ……
最後には、ユリは興奮しすぎた様子で、教室を出て行ってしまう。
……いつかちゃんと1周目で、彼女のルートもプレイしてあげよう。
詩の見せあいが始まり、この日もナツキから詩の交換を。
ところが、今回の詩は完璧にナツキワードのみで作ったのに、どういうわけかナツキは俺の詩をあまり気に入ってくれない。
「べつにアンタのことを待ってたとか、そういうわけじゃないから」
ナツキはがっかりしたように俺に詩を見せるが、詩はタイトルも本文も、文字化け……ではなく暗号化されていて読めない。
俺はWebをちょっと(どころではなく)触っているので、これがBase64エンコードされた文字列だとなんとなく感付いたが、この時は解読しなかった。
でも、やっぱり今日俺が一緒にマンガを読まなかったこと、怒ってる?
怒っているどころではなかった。
「なんで今日は私と一緒に本を読みに来てくれなかったの? 私、待ってたのに」
ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああやっぱり!!!!!
やがてBGMが不気味に変化し、画面が暗く赤っぽくなり、ナツキの両目と口にはまたもモザイクが……
「アンタは私に泣きながら家に帰らせたいの?」
そう言うと、ナツキは涙を流し始める。血の涙を。
「この部は私が安心できる唯一の場所なの。それを台無しにしないで」
やっぱりナツキの家には何か問題が……?
「私と遊んでよ」
「私 と 遊 ん で よ ! ! !」
※このセリフ、原語では“PLAY WITH ME!!!”というのだが、これは本作にいくつかあるキーワードの一つであり、またナツキやユリのイベント時に流れるBGMのタイトルも『Play With Me』という。
ナツキの口のモザイクは消え、やけに大きな口で笑っていた。
その直後、ナツキの首は音を立てて……(ここはアレすぎて書きたくない)
END
……えっ? END?
「次に詩を見せるのは?」 「モニカ」
……いやいや、次じゃねぇよ、ナツキは? ナツキはどうした?
今のはいったい何だったんだ……ナツキは死んだの? だとしてもなんで? ねぇ、なんで?
待てよ、さっきのは「END」じゃない、左右反転している、つまりENDじゃないよね。
ナツキは大丈夫だよね? 大丈夫だと言ってくれよ。姿を見せてくれよ。ナツキ!!
しかたなく話を進めるが、俺は茫然自失としていた。
次に、ユリはまだ部室に戻っていないのでモニカに詩を見せると、なぜか俺はユリ向けの詩を書いたことになっていて、ユリに対するアドバイスをもらう。
まぁ、ナツキも気に入ってくれなかったし、たぶん強制的にそうなるんだろう。
その頃ユリが部室に戻ってくる。
モニカのこの日の詩は『Save Me』という題名で、これは1周目では読み逃してしまったものだ。
内容は1周目のものと比べ、一部の単語から数文字が抜け落ちていて、1周目の完全な詩を知らない俺にとっては読むのにけっこう苦労した。
知らない単語が出てきても正確な綴りがわからないので、単語を正確に入力しなければならないネット辞書は使えない。
……待てよ、紙の辞書なら先頭の文字から順に絞り込んで探せるじゃないか。
1周目を翻訳していた時には紙の辞書もけっこう使っていた俺だが、徐々にネット辞書だけで間に合うようになっていたので、久しぶりに紙の辞書を開くことになった。
詩の内容は、不協和音とか、雑音とか、限りないとか、意味がないとか……
これらは、このゲームを終了した時にモニカの身に起こる現象(3周目にモニカが言及する)のことだと思われる。
また、赤・緑・青とか、サイン・コサイン・タンジェントとかは、一説によるとゲームのプログラミングに関する用語のことであるという。
なるほど、『Save Me』とは「私を救って」と「(ゲームを)セーブして」のダブルミーニングであろうから、この詩がゲームの話であろうことは容易に想像できる。
そして最後の1行は、かなり行間を開けて……「彼女を消して」
その後、恒例のモニカの執筆講座が始まるが……
「困難な決断に直面した時は、ゲームを忘れずにセーブして!」
メタ発言だし、セーブなんかしても無駄だってのは、2周目に入った時に誰もが学んだことだ。
この辺りの話も1周目と同じなので、できればその時に聞いておきたかったが。
「……私、誰に話しかけているのかしら?」
お、メタ発言をごまかす時のお決まりのセリフか?
「聞こえる?」(Can you hear me?)
……いや、これって……2日目開始時に生成されたファイルの名前と同じじゃないか……
そして唐突なアラートメッセージが。
「どうか私を助けて」
なっ……ゲームのアラートすらお前の味方か! いや、味方じゃなくてお前自身だな?
しかもアラートだから、嫌でも「OK」を選ぶしかないという。何たる屈辱。
そういえば、先ほどモニカの詩を読んだ直後、画面全体が歪んだような……その時は自作自演だと思ったが。
そして、次はユリ。
ユリはすっかり主人公に心酔した様子で、もはや詩などあまり読んでおらず、詩を持っているだけでいいなどと言う。
ユリの詩は『Wheel』(車輪)という題名。
紙には所々に薄い染みがある。意味深だ……
詩の内容は、「回転する車輪」から様々なもの――ほとんどは難しい単語の羅列――に展開していき、それらの単語が様々に組み合わされ、最後は車輪に収束するというものだが、ユリも言うように内容に大した意味はないと思われる。
この詩はおそらく本作で最も翻訳するのが難しい英文だろう。
「A bolthead of holy stakes tied to the existence of a docked ship to another world.」
(異世界へ渡る繋がれた船の存在に結びつけられた神聖な火刑台のネジ頭???)
「A time-devouring prayer connecting a sky of forty gears and open human eyes in all directions.」
(あらゆる方向に開いたヒトの目と40の歯車の空を繋ぐ時を食らい尽くす祈祷文???)
ギャーーーーーーーー><
ユリは自分の活発すぎる思考を、主人公のペンにぶつけて詩を書いたという。……俺のペン?
なんでも、昨日主人公がカバンから落としたペンを持ち帰ったというが……
ぶつけたって、つまり……“ああいうこと”?
詩の見せあいが終わったところで、再び「特別な詩」が解禁されたとのメッセージが表示される。二つ目。
読んでみると……いや、これは詩ではなく、スライドパズルのように細かく区切られ、バラバラに並び替えられたモニカの立ち絵だ。
「助けて」ってこれのことか……?
クリックすると並びが少し変わるが、特に何も起こらずに暗転してゲームに戻る。
!?!?!?!?!?!?
画面にサヨリの顔が!?
マウスポインターに追従して動くようだ。
スクショを取ろうとしたが、スクショにそれは映らなかった、なぜならそれはマウスポインターに追従して動く画像じゃなくて、マウスポインターそのものだったからだ。
数クリックでマウスポインターは元に戻ったが、久々に見たサヨリの顔……それは今はただただ切なく、末恐ろしいものだった。
なんだか助けてあげられなかったのを責められているような気がして……
ストーリーのほうは、モニカが文化祭に関する話し合いを始めようとするが、ナツキは全く乗り気でないばかりか、サヨリがいない今では、モニカの意見に賛同する者はいなかった。
というか、ナツキいるじゃん! やっぱり無事だったんだな!!!!
ナツキはさらにまくしたてるが、その中にまた気になるセリフが。
「私にしても、ただ家にいるよりここにいるほうがマシってだけよ」
ナツキ……
モニカはナツキの言葉に明らかに動揺していたが、俺はナツキを心の中で応援していた。
そうだナツキ、文化祭の出し物なんかやめて、一緒に模擬店を巡ってイカフライを食べよう!
ナツキは、少人数で楽しく過ごせる場所として文芸部を愛していたようだが、そんな場所をモニカが奪おうとしているように感じたのだ。
「そんな場所は……私には他にはあまりないのよ……」
そして、気分を害してしまったナツキは、それほどまでに嫌いな家に帰ってしまった。なんてこった。
するとユリは、黒い本音(?)を覗かせるようになる。
「あんな不愉快なガキのことなんて誰が気にするんです?」
「彼女が自殺したとしても誰も泣きませんよ」
貴様、言いやがったな? しかもBGMはやたらアップテンポ。
あぁ……これで俺のユリへの好感度はすっかり地に落ちてしまった。
その後、主人公とユリとで少し話し、最終的にはやはり部で何か取り組みをすることになる。
ナツキには明日話してあげよう……って、ナツキは今度も無事なんだろうな?
しかもユリが縁起でもないことを言うもんだから、ナツキがいなくなるたび、俺は気が気ではない。
この日の部活はお開きとなり、ユリは主人公と一緒に帰ろうとするが、モニカが主人公を呼び止め、二人きりで少し話す。
徐々に画面が暗くなっていくが、モニカはナツキやユリの批判をする。
「時々、ここではあなたと私だけが、本物の人間のように感じるの。どういう意味かわかる?」
本物の人間……ね、なるほど。確かにそうかもな。少なくとも俺はな。
さらにモニカは何かを言おうとするが、なぜか画面は暗転していき、モニカの制止(?)もむなしく、詩作パートに突入する。
何なんだ……? モニカの意に反することが起こるのか?
あとになって見れば、ただゲームが壊れてたってことだろうけど。
この日も俺はナツキ向けの詩を書いていくが、単語の○個目を表す“分子”がおかしい。
1/20 → 11/20 → 111/20 → 1111/20 → ……というふうになっている。
まぁ、こんなの今となってはくだらない嫌がらせだが。
4日目以降
あれ、4周目「以降」となっているが……今は気にしてはいけない。
主人公が部室に来ると、早くもユリは準備万端で待ち構えていた。
今日もか……
ナツキが昨日の話し合いの途中で帰ってしまったことの反省を口にするが、ユリは一言。
「自販機の下に落ちているお金でも探しに行くなりしたらどうですか?」
ナツキは半泣きで走り去ってしまった。ひどいわ。
今日も遅刻してきたモニカが部室にやってきて、主人公を何かに誘おうとするが、先客のユリがぴしゃりと、もう予定があると言い放つ。
いや、ないよ?
「私はもう、彼を文学にハマらせたんです、嬉しくありませんか、モニカさん?」
モニカを論破し、諦めさせると、ユリは一瞬裏の顔を覗かせる。
目が怖い……いわゆるヤンデレ目ってやつか。本作では初めて見たけど、これからは頻繁に表れる。
そして強制ユリイベントへ。俺も諦めた。
ユリは主人公のために特別に用意したお茶を淹れることにした。
ユリはその性格や話し方とは裏腹に、非常に優雅かつテキパキと準備をしていた。
そして主人公を置いて水を汲みに行くのだが……10分経っても戻ってこないので、主人公は彼女を探しに行くことにした。
廊下を少し進むと……激しい呼吸の音が……
その音を辿って廊下を曲がると、そこには……
左腕の袖をまくったユリ。その腕には無数の切り傷が。
次の瞬間、画面が猛スピードで逆再生され、ユリが部室を出ていった直後のシーンまで戻る。
そしてユリは何事もなかったかのように部室に戻ってくる。
ちょ……よりによって学校の廊下で自傷とか、やめろよ……
その後はユリが烏龍茶を入れてくれたり、床に座って一緒に本を読んだり、主人公が持ってきたチョコレートキャンディ(ひとくちチョコレートのこと?)をユリの口に突っ込んだり、いろいろ楽しそうなひと時を過ごしたようだが、もはや頭には入ってこない。
床に座る理由について、ユリは背中が痛くなるからだと言ったが、なぜ背中が痛いのかについては何か言いよどんでいた気がする。
肩が凝る、とかならどうせアレだけど、何を隠していたんだろう。
イベントCGは、なんと動くエフェクト付きだし。何この特別仕様。
ところが、主人公がチョコをユリの口に入れた直後、ユリは突然おかしくなる。
ユリは呼吸を荒らげ、主人公の腕を掴んだ。
「胸のドキドキが止まりません、《主人公》さん……あなたは感じますか?」
そして掴んだ主人公の腕を、なんと彼女の胸に押し当てた。
やめろ、俺は貧乳原理主義者だから巨乳は嫌いなんだ。やめろ。やめろ。やめろ。やめろ。やめろ。やめろ。やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメ
「気が狂ってしまいそうです……」
もう狂ってるわ!
「私はただ……あなたを……見ていたい」
暗い画面にユリの顔がアップで表示され、しかも目玉がぎょろぎょろと動いていて……こええええええええええええええ
非常に荒い呼吸で主人公を見つめる。
そこにモニカが来て、詩の見せあいを始めると言う。モニカGJ!!!
というわけで、まずナツキから。
この日もやはりナツキは詩をあまり気に入ってくれなかった。
しかし、ナツキはやけに真剣な表情で、主人公に「詩」を見せてくれる。
それは詩ではなかった。タイトルはなく、内容は最近様子がおかしいユリを心配し、主人公に解決のための協力を求める、けっこう長文の手紙だった。
ナツキにとって、ユリを心配して主人公を頼る手紙を書くことはとても恥ずかしく、辛いことだったのは想像に難くないが、手紙の中でナツキは繰り返し、主人公に懇願をする。
「お願い、何とかしてあげて」
そしてモニカについても、なぜかはわからないが、彼女はこのことを無視しようとばかりする、とモニカを非難する。
「私がこれを書いたことをあの人に知られないようにして!!!!」
ナツキ……キミはなんて優しいんだ……
その優しさに俺は胸がいっぱいになり、なおかつそれがおそらく決して叶わないことにまた胸が痛む。
俺たちが何をしても、もうモニカからは逃れられない。
だって、その詩を読んだ直後、すぐさま画面が歪み、ナツキの様子が変わったから。
ナツキの顔は真っ白で、目も口もない。
※実は前日の「私と遊んで」のシーンでも、画面が暗くて、両目と口にモザイクがかかっていたのでわかりにくかったが、顔自体は今回と同じものであり、モザイクの奥には目も口もなかった。ただ今回はなぜかモザイクもないが。
「気が変わったわ。たった今読んだことは全部なかったことにして」
はい、さっそく改変きました! 仕事早いっすね!
「アンタがもっとモニカさんと一緒に過ごしてさえいれば、こんな問題なんか全部なくなるのに」
(If you would just spend more time with Monika, 〜)
※俺の訳では、ナツキはモニカを「さん」付けで呼んでいる。
「これからはモニカさんのことだけを考えて」
(Just think of Monika from now on.)
お、これは……?
「モニカさんだけ」(Just Monika.)
出ました! これが本作最大のミーム「Just Monika.」ですね!
※日本語化Modでは「モニカだけ」と訳されている。
プレイする前からこのワードの存在だけは知ってたけどね。まさかナツキのセリフだとは思わなかった……
その後、このキーワードは地の文、選択肢、アラートメッセージと繰り返し表示され、あげくの果てには起動直後の表示(Team Salvatoのロゴ)に戻り、その直後に警告文、の代わりに「Just Monika.」と表示されるという念の入れ方。
その後、すべては元に戻るが、もうこのゲームは一線を越えてしまったようだ。
地の文ってことは、主人公はそう思ったということなのか?
ただ少なくとも、実は主人公のセリフと地の文は、この「Just Monika.」を除くと、この日ナツキやユリと詩を見せあうシーンの冒頭で主人公が一言ずつ喋るのを最後に、なんと7日目に至るまでぱったりとなくなってしまうのだ。まだ4日目だぞ。てか7日目って。1周目は6日目で終わったぞ。
Just Monika. ねぇ……
次にユリに詩を見せる。
ユリはもう最初からテンションがおかしい。
主人公の詩を持って帰りたいと言うユリに対して主人公が「いいよ」と言ったのが、彼の最後の言葉となった。
ユリは、その詩を持ち帰り、「何度も読み返しながら一人○○○をする」とか、「この紙で肌を切ってあなたの皮脂を血潮に取り入れる」とか、「アハハハハハ」とか、ヤンデレ目で言い始める(そしてこれらの発言はログに残らない)。
そしてユリの詩を読む。
うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
背景が赤っぽくなり、BGMがおどろおどろしくなったと思えば、詩を書いた紙には赤い染みや黄色い染みがそこら中に付着していた。
そしてその文面は非常に歪んでいて、ほとんど読むことができない。
俺はさっさと翻訳、というより判読を諦めたが、実際にこの詩のほとんどの部分は英語ですらない単語、いくつかは何語でもない文字の羅列になっているらしい。
しかし、実は最後の数行は英語になっており、判読さえできれば訳すこともできるのだという。
俺はまだ訳していないが、とにかく次のシーンへ。
って、またかよ!!!!!!
詩の紙をどけると、そこにはまたもユリの顔のアップが。そして動く目玉。
ユリはこの詩の内容を説明するが、その言葉は文字化けしたような文字列になっていて、結局わからない。
ユリによると、この詩にはユリの「匂い」を付けておいたとのこと。じゃあ黄色い染みって……
だが次の瞬間、ユリの立ち絵にノイズが走り、画面とBGMが元に戻ると、正気に戻ったユリは吐き気を訴えて退場していく。
次にモニカに詩を見せる。
まずモニカは、主人公が見るはずのないものを見てしまったと言う。確かに。
ユリは主人公といると簡単に情緒不安定になり、どこか隠れられる場所を探しては、学校に持ち込んだナイフを取り出して腕を切り始めるのだという。
しかも、ユリはナイフのコレクションでも持っているのか、毎日違うナイフを持ってきているのだという。
1周目に、週末をユリと過ごしていれば言及されるが、確かにユリはナイフをコレクションしており、なかなかにこだわりがあるようだ。
ただしユリは鬱であるわけではなく、ある種の高揚感――例えば性的な――を得ているのだという。
そんなユリと一緒に過ごすのは危険であり、なんとなれば私と一緒に過ごすように、とモニカは言う。
……どっちも嫌だ……
さて、主人公の詩はユリにあげてしまったので詩を読めなかったモニカだが、彼女の詩を見せてくれる。
しかし、そこで表示されたのは、昔のゲーム機のプレイ中に本体に衝撃を与えた時のように、激しくバグった画面と、ブーというノイズ音が鳴りっぱなし、というもので、詩は見えない。
モニカは一瞬驚いたが、続行する。
すると、「Yes」「No」とだけ書かれたウィンドウが現れる。
おそらく「特別な詩が解禁されました」みたいなものだと思ったが、俺はあえて「No」を選択。
しかし、それでもその「詩」は読める。「特別な詩」、三つ目。
『夢』と題されたその詩は、「私」が友達を含めた4人でお泊まり会をしていた時の出来事を綴ったものだ。
「私」は寝落ちをしてしまうが、夢の中では依然として同じメンバーと同じ場所にいた。
そして知らない誰かもいた……
この詩(?)の真意もはっきりとはしない。
「知らない誰か」とは主人公のことだろうか、いや、それとも……
この詩を読み終わると、モニカが文化祭の準備についての話し合いを始める。
ナツキはやはり乗り気ではなく無言で、気まずい空気が流れる。
ユリの「前触れ」発言は1周目と同じだが、今回はそれが現実になるんだよな……
それぞれが週末にする準備を決めるが、主人公はモニカを手伝うと、モニカが一方的に決定したため、ナツキとユリが反発する。俺も反発する。
いやいや、俺は今度こそ、今 度 こ そ 、ナツキと週末にイチャイチャして、火災報知機にも邪魔されずに、サヨリにも邪魔されずに、ナツキへの告白を果たすのだ。
ナツキとユリはモニカに対応するために共同戦線を張るかと思いきや、やっぱり2日目と同じように罵り合いを始めてしまう。
結局、1周目と同じように主人公の一存で決めることになるのだが……
俺はモニカを選んだ。だって「Just Monika.」ですもの。
不正はあった。
まず、ナツキやユリを選ぼうとしても、マウスポインターがモニカのボタンのほうに勝手に動いていく。いったいどうやって?
それでもナツキを選ぼうと、何とかマウスをコントロールしたが、それで結局クリックしたのはナツキとモニカの間にあったユリのボタンの辺りだった気がする。
で、それを選ぶと、真っ白な画面にユリの目玉だけが表示された。もはや怨念。
そして数秒後、現れたのは「モニカ」だけの選択肢が10個。当然どれを選んでもモニカになる。
一番上のボタンだけはほとんど画面から見切れていたが、それも「モニカ」のボタンに他ならない。
背景には依然としてユリの目玉。俺がモニカを選ぶのを見ている。
主人公に選ばれたモニカは大喜びだが、ナツキとユリはなおも不公平だと抗議する。もっとやれ!
そしてユリは、ついにみんなの目の前で裏の顔をあらわにする。
ユリはモニカを散々に罵った後、こう言う。
「一つ提案があります。アナタ、自殺しようって考えたことありません? それがきっとアナタの精神衛生のためですよ」
ナツキとモニカはさすがにちょっと引いたようで、ユリに部室の外まで追い立てられ、部室を出ていった。
「ねぇ、《主人公》……ユリって本当にアレよね?」
モニカは部室を出る直前、そう言ってくすくすと笑った。
このタイミングで、ゲームのインストールディレクトリに「have a nice weekend!」(良い週末を!)というファイル(拡張子なし)が生成される。
このファイルの内容は、本作ではおなじみのBase64エンコードされたプレーンテキストで、デコードして読んでみると、何やら極めて比喩的なことが書いてある。
「未来の豊かな芳香、現在の熱く絶妙なバランス、そして過去のほろ苦い後味を知らない男は何だ?」
また同時に、これまでにプレイ中に同ディレクトリに生成された他のファイルがすべて削除されている。
俺はこのディレクトリをちょくちょくチェックしながらプレイしていたので、すぐに気付けたが……
ゲーム内では、ついに主人公と二人きりになれたユリが暴走を始める。
「あなたと同じ空気を吸っていないと、死んでしまうような気がするんです」
「私の体の隅々が……私の血の一滴一滴が……あなたの名前を叫んでいるようです」
「あなたのことが好きすぎて、私はあなたから盗んだペンで××××だってします」
「ただあなたの皮膚を切り開いて、その中に潜り込みたいんです」
……からの、
「私の告白を受け入れてくれますか?」
却下!
選択肢は、サヨリへの告白の時とはまるで違い、単に「はい」「いいえ」という、あたかもRPGのような淡白なものだった。
なぜなら、ユリに詩を見せた時以来、主人公は一言も発しない、地の文で何かを考えたりもしない、まるで抜け殻だからだ。
主人公の返事を聞いたユリは、狂ったように笑い始めるが……
むむ? テキストウィンドウに「セーブ」「ロード」などのボタンがないぞ?
あっ……これって……
ユリはどこからか包丁を取り出すと、
刃先を自分に向け、
自分の腹を、
グサリ、
もう一度グサリ、
さらに胸をひと突き、
そして床に崩れ落ちた。
画面に映し出されるのはイベントCG……ではなくユリの死体と血溜まり、そして転がる包丁。一応1枚絵だからCGか。
こりゃPG13相当の自主規制も納得ですわ……(ガクブル)
そして死んでいるはずなのに、文字化けした文字列をセリフとして発している。
クリックすると進むが、文字化けしたセリフが別の文字化けしたセリフに変わるだけ。
何度クリックしてもほとんど変わらない。
それに嫌気がさしてスキップボタンを押してみるが――ここでは「未読スキップ」が無効でもスキップできる――何秒かスキップし続けてみても何も変わらない。
くそっ! またゲームオーバーかよ! もう戻れないってか!
セーブやロードのボタンは復活していたので、俺はダメ元で以前のセーブデータをロードしてみた。
ロードできた。が。
何も変わらない。
いや……変わって……る……?
変わってる。さっきまで昼のシーンの画像だったのに、夕暮れ時のシーンになってる!
もう一度ロードしてみる。
今度は夜のシーンになっている。
なるほど……
以後、翌朝 → 夕 → 夜 → 翌朝 → ……と繰り返す。
いつまで? もちろん……
これらのCGをよく見比べると、時間の経過とともに血痕は乾いて黒く変色していき、ユリの肌と目は色褪せていき、最後には顔の表情が微妙に変わる、という地味に嫌な変化が忠実に描写されている。
ちなみにここでログを見ると、本作のダウンロードページにあったゲームの紹介文を繰り返したものになっている。
しかも最後の一文だけは、さらに何度も何度も繰り返されている。
「私と一番多くの時間を一緒に過ごすと約束してくれる?」
……しませんでした。私のせいです。
10枚目のCGが表示された後――つまり7日目の朝――CGがなくなる。
7日目といえば、月曜、文化祭の日だ。
ちなみに、このタイミングですべてのセーブデータと「have a nice weekend!」ファイルが削除される。
ナツキが意気揚々と部室に現れるが、テキストウィンドウにはまたもやセーブやロード等のボタンがない。
ナツキ! 来ちゃだめだ!
ナツキは主人公を見つけるが、次いでユリの変わり果てた姿を見つけると、悲鳴を上げる。
そしてあまりのショックに嘔吐し、走り去ってしまう。誰だ、vomit-chanって呼んだ奴は!
このナツキを描写した地の文が、本作で久々に表れた主人公の「生きている証」だった。
またこれから当面の間、地の文もセリフもなくなるのだが……
次にモニカが部室にやってきて、事の顛末を知る。
モニカはさして驚かなかったが、主人公がずっとここで週末を過ごしたことに気付くと少し驚いたようだった。
「良い週末を」って、そういう意味かよ!!!!
「スクリプトがそんなにひどく壊れていたなんて、気付かなかったわ。本当にごめんなさい! さぞかし退屈だったでしょうね……」
スクリプト? それと、退屈、だと? 貴様……
埋め合わせをすると言ってモニカが取り出したのは、モノではなく、コンソールウィンドウ。
> os.remove("characters/yuri.chr")
> _
yuri.chr deleted successfully.
> os.remove("characters/natsuki.chr")
yuri.chr deleted successfully.
> _
natsuki.chr deleted successfully.
yuri.chr deleted successfully.
おい、待て、ナツキまで消しやがったのか?
このコンソールコマンドが本物かどうかはわからない、というよりたぶん演出だろうが、少なくともコマンドが実行されるのと同時に二つのキャラクターファイルは削除された。
おそらく1周目のラストでサヨリのファイルが消されたのも、これと同様の方法でモニカがやったことなのだろう。
俺は1周目をプレイした後の検証でそれらのファイルを弄っていたので、それらのファイルの存在自体が実際には単なる演出であると知っていたし、バックアップも取っていたが、だからといって何の意味もない。
ナツキは消されてしまった。おそらく生きたまま。
ゲームの進行度は、セーブデータをバックアップから復元しても、ナツキのデータを復元しても、もう戻せないのだ。ゲームの進行度をバックアップしてれば戻せるけどね。
モニカは主亡きカップケーキのトレイのホイルを取り外すと、これが最後だからと言って、ニコニコしながら一つ取り、おもむろに食べ始めた。
そのトレイの持ち主を示す名が、すでにバグっている。
なんと身勝手な……許せねぇ……
そしてモニカは最後の仕上げに何かをして、画面が乱れ、暗転する。
(終わり)
その後
いつもの起動時の画面……と思ったら、それすら表示が乱れている。
そう、もはやこのゲームは何もかもが壊れてしまったのだ。
ゲームを壊してまで、モニカは何がしたかったのか。
そして主人公の、いや「プレイヤー」の運命やいかに。
3周目、すべてが明らかに。
……ええ、このゲームはまだ終わりませんよ。
まとめ
ずいぶん長くなってしまったが、『Doki Doki Literature Club!』の2周目はこんな感じ。
……長すぎるわ!!
俺はそろそろ要約することもちゃんと覚えような。
でも、書きたいことがいっぱいあったんだもん……
1周目の感想記事だってちょっと長すぎたと思ってたのに、今回のは日数当たりでいうとその2倍は優にある。
まぁ1周目はただのギャルゲーで、書くことが比較的少なかったんだろうけど……
というブログの反省は別にしても。
……またしても俺はナツキと結ばれなかった。
それどころか、1周目と違ってナツキは消されてしまった。しかも最期を見ることもできなかった。
いい所すらほとんどなかったじゃないか。
本作で絶対に許せないものが一つだけあるとすれば、それはモニカだ、モニカだけ、Just Monika.
俺にとって3周目などもう消化試合……とは言わず、俺は最後の最後まで希望を捨てないで3周目もプレイした。
その模様は、近日公開の感想記事にてお届けするので、暇な人は見に来てね。
2018/04/12追記:公開したぜ。
それにしても、2周目は1周目とはまるで違う……
そして巧みな演出の数々。
単なる一瞬の驚きや恐怖を演出するものもあり、プレイヤーの心理を手玉に取る「週末」のような演出もあり。
1周目とは全く異なる方法で、大きく心を揺さぶられた。
やはりDDLC、只者ではない。恐るべし。
実は、この記事を書いた時にはすでに本作をエンディングまでプレイし終わっているので、その他のいろんなことについては次回以降の記事に書くことにする。
考察とかModについても興味があるし、これからも長く楽しめるだろう。
そして……
いや、これはあとのお楽しみ、で。
それでは次回の記事でお会いしましょう。
こめんと